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人に好かれる6原則


6.重要感を与える-誠意を込めて(2)


コダック写真機で有名なジョージーイーストマンは、巨万の富を築いた世界有数の大実業家である。

それほどの大事業をなしとげた人でも、

なお、われわれと同じように、ちょっとした讃辞に大変な感激ぶりを見せたのである。

ニューヨークの高級いす製作会社のジェームズーアダムソン社長は、

彼の建物に取りつける「座席」の注文を取りたいと思っていた。

アダムソンが約束の場所に着くと、建築家が彼に注意した。


あなたは、この注文をぜひとも取りたいのでしょう。

もしあなたがイーストマンの時間を五分間以上とるようなことをすると、

成功の見込みは、まずありません。


イーストマンはなかなかのやかまし屋で、とてもいそがしい人ですから、

手早く切りあげるにかぎります。


アダムソンは、いわれたとおりにするつもりだった。

イーストマンは、「おはようで、おふたりのご用件は?」

アダムソンはイーストマンに向かっていった。


さきほどからわたしは、このお部屋のりっぱな出来に感心していました。

こういうりっぱな部屋で仕事をするのは、ずいぶん楽しいでしょうね。

わたしは室内装飾が専門ですが、今までこれほどりっぱな部屋を見たことがありません。


イーストマンが答えた。

「なるほど、そういわれてみると、この部屋ができた当時のことを思い出します。

なかなかいい部屋でしょう。

できた当座はわたしもうれしかったのですが、近ごろではいそがしさに取りまぎれて、

何週間もこの部屋の良さを忘れていることがあります」。



アダムソンは、羽目板に近づき、それをなでながらいった。

「これはイギリス樫ですね。イタリア樫とはちょっと木目がちがいます」。

すると、イーストマンは答えた。

「そうです、イギリスから輸入したものです。

材木のことをよく知っている友人が選んでくれたのです」。


そしてイーストマンは、部屋の均整、色彩、手ぼりの装飾、そのほか、彼自身のくふうした箇所など、いろいろとアダムソンに説明して聞かせた。

ふたりは、手のこんだ部屋の造作を見ながら歩きまわっていたが、窓のところで立ちどまった。

イーストマンが、社会事業として自分の建てた諸施設について、

ものやわらかな調子で控え目に話しだしたのである。



アダムソンは、イーストマンが人類の苦痛を軽減するために

彼の財力を活用している理想主義的なやり方について、心から賛意を表した。



やがてイーストマンは、ガラスのケースを開けて、

彼が最初に手に入れたという写真機を取り出した。


アダムソンは、イーストマンが商売をはじめたころの苦労について質問した。

するとイーストマンは、貧乏な少年時代を回顧して、

寡婦の母が安下宿屋を経営し、自分が日給五十セントで保険会社につとめていたことなど、

実感をこめて話した。


アダムソンはなおも質問をつづけ、乾板の実験をしていたころの話に耳をかたむけた。

事務所で一日じゅう働きつづけたこと、

薬品が作用するわずかな時間を利用して睡眠をとりながら夜どおし実験したこと、


ときには七十二時間、眠るときも働くときも着のみ着のままですごしたことなど、



イーストマンの話はつきなかった。

アダムソンが最初イーストマンの部屋にはいったのは十時十五分で、

五分間以上手まどってはだめだといわれていた。

ところが、すでに一時間も二時間も経過している。



それでもまだ話がつきないのだ。

最後に、イーストマンがアダムソンに向かってこういった-

この前、日本へ行ったとき、いすを買ってきて家のポーチに置きました。

ところが、日に当って塗りがはげたので、

このあいだペンキを買ってきて自分で塗りかえました。


どうです、わたしのペンキ塗りの腕前を見てくれませんか?

-じゃあ、一度、家のほうへいらしてください。昼食のあとでごらんに入れましょう」。


昼食後、イーストマンは、アダムソンにいすを見せた。

一脚一ドル五十セントとはしないようないすで、およそ億万長者に似つかわしくないしろ物だが、




自分でペンキを塗ったというのが自慢なのだ。



九万ドルにおよぶ座席の注文は、はたしてだれの手に落ちたか

-それは、いうまでもあるまい。


そのとき以来、イーストマンとジェームズーアダムソンとは、生涯の親友になった。



「人と話をするときは、その人自身のことを話題にせよ。

そうすれば、相手は何時間でもこちらの話を聞いてくれる」

―これは大英帝国の史上最高に明敏な政治家のひとり、ディズレーリのことばである。



人を動かす

D.カーネギー

ゆたか

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